MIRACLE LINUXは21歳 - その誕生から現在まで

ミラクルリナックス? みらくるりなっくす? 何それ? 昔、聞いたことがあるなぁ…。まだやってたの? 誰が使っているの? 昔からのLinuxユーザーの皆さん、初めてのエンジニアの皆さん、MIRACLE LINUXは今年21歳になりました。MIRACLE LINUXはRed Hat Enterprise Linuxをベースとした国産のLinuxディストリビューションとして、現在もサイバートラスト株式会社により開発・サポートが継続されています。そのMIRACLE LINUXの21年にわたる経緯を簡単にご紹介しましょう。

MIRACLE LINUX 創設期 2000年〜

MIRACLE LINUXは、 2000年6月に日本オラクル株式会社と日本電気株式会社が中心となり設立されたミラクル・リナックス株式会社によって、オラクル社のリレーショナルデータベース(RDB)製品が安定して稼働するLinuxディストリビューションを企業向けに提供することを目的に開発が始まりました。それは2000年9月に「Miracle Linux Standard Edition Version1.0」として初めてリリースされます。

Asianuxプロジェクト期 2003年〜2015年

米国のRed Hat Enterprise Linuxや欧州のSUSE Linuxに匹敵するようなアジアを代表するLinux ディストリビューションを生み出そうと、2003年12月にミラクル・リナックス社(日本)、Red Flag社(中国)の2社でMIRACLE LINUXをベースとした『Asianuxプロジェクト』が開始されます。当時は日本語、中国語、韓国語といったマルチバイト文字を扱うことは特殊な分野であり、マルチバイト言語を標準でサポートできることもAsianuxの大きな特徴の一つでした。

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(最初のバージョンのパッケージ。デザインを統一しつつ各社のコーポレートカラーを用いている。左のグリーンのパッケージが日本向け。)

『Asianuxプロジェクト』は、日本と中国の企業で始まった後、韓国のHaanSoft社(2004年)ベトナムのベトソフトウェア社(2007年)、タイのWTEC社(2008年)、スリランカのエンタープライズテクノロジー社(2010年)が参加し、アジア6カ国に展開するプロジェクトに成長し、アジアにおけるLinuxの普及に大きく貢献することができました。

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(サンフランシスコの展示会でのAsianux出展ブースの様子)

Asianuxプロジェクトはその使命を果たし2015年9月に終了します。プロジェクト解散後も「Asianux」の商標は、各国の参加企業が保有しています。日本ではサイバートラストが保有しMIRACLE LINUXの製品名称の一部として使用されています。

2015年〜現在 国産ディストリビューションとして組み込み分野で導入が進む

Asianuxプロジェクト終了後、MIRACLE LINUXは日本国内での開発に回帰します。リリースから5年以上の販売期間、10年間にわたるサポートの提供により、長期的な安定運用が求めらる基幹システム、通信システム、業務専用機器への組み込みといった分野で導入され、特に産業用PCのプリインストール版Linuxディストリビューションとして57%のシェアを占めるまでになりました(2020年10月のミック経済研究所のレポート)。

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2017年10月にミラクル・リナックス株式会社は、ミラクル・リナックス株式会社を存続会社としてサイバートラスト株式会社と合併し、「サイバートラスト株式会社」の社名の下でMIRACLE LINUXの開発、サポートは継続して行われています。

MIRACLE LINUX製品の特長

現在、MIRACLE LINUX製品は最新版となる「MIRACLE LINUX 8 Asianux Inside」を中核として次のラインアップで提供されています。

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MIRACLE LINUX 8 Asianux Inside
2020年3月にリリースされたMIRACLE LINUXの最新版となり、RHEL 8.1との高い互換性を備えています。OpenSSL 1.1.1 a、およびTLS 1.3規格をサポートし、スマートカードやハードウェアセキュリティモジュール (HSM) など PKCS#11 対応デバイスへのサポートも強化されています。

Asianux Server == MIRACLE LINUX HA
従来からサーバーやシステムの多重化によるハイアベイラビリティ(高可用性)はありますが、MIRACLE LINUX HAは単体での運用において、稼働しているシステムのハードウェア障害だけでなくソフトウェア障害も検出して自システムのアプリケーションの再起動、OSの再起動を行います。単体ハードウェアでの運用においてサービスの停止時間を最小限とすることができ、冗長化を必要としない費用対効果の高いソリューションとなります。

Microsoft Azure 対応 MIRACLE LINUX 8 Asianux Inside
Microsoft Azure Marketplaceから購入、導入可能なMIRACLE LINUXとなります。ブラウザ上での操作でMicrosoft Azureへ容易にデプロイできます。サポートも別途購入可能です。

MIRACLE LINUXは日本国内でサポート
MIRACLE LINUXは日本企業が提供するディストリビューションなので、手続きや準拠する法令、サポートが日本の営業時間内、また国内で完結することができます。

  • 全てを日本円で決済できるので予算計画が立てやすく、為替の変動の影響による費用増加のリスクを回避
  • 日本のビジネス商習慣に合わせた障害対応、原因究明の対応
  • 万が一のトラブル時の際は、日本国内法令に準拠した手続きが可能
  • サポートは国内でエンジニアが対応

MIRACLE LINUXはこんなところに

前記したように、MIRACLE LINUXは社会的なインフラを中心とした専用機器、特定用途向けの産業用PC向けLinuxディストリビューションにおいて高いシェアを占め、これまで累計16万台以上の製品で導入され、FA(ファクトリーオートメーション)、PA(プロセスオートメーション)、医療分野、交通機関、倉庫・物流等の施設管理、通信基盤といった社会の幅広い分野で活躍しています。

産業用PCやアプライアンスは、通常のPCとは異なる高温や低温、衝撃や振動、粉塵といった過酷な環境で安定した連続稼働が求めらます。また特定用途向けのPCは5年以上の長期間にわたり使用されるため、製品供給、サポートもそれに対応できる体制を構築しています。

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2000年に誕生したMIRACLE LINUXは、これまで日本企業による国産ディストリビューションとして、安定性、継続性、長期サポートが求められる分野で成長を続けてきました。MIRACLE LINUXはこれからもっと皆さんの近くで活躍することができるように、様々な取り組みを行っていきます。

f:id:miraclelinux:20210709142755p:plain:left2000年と言えば「2000年問題」があったとか(年月日を6桁で管理しているシステムで年が00になるので大問題が起きるというもの、1999年の大晦日から2000年のお正月は万一に備えてエンジニアがシステム部に寝泊まりしたらしい)。当時としては珍しく、コミュニティからではなく、企業が主導して2000年に誕生したMIRACLE LINUXは、アジアに向かったりと独自の展開をしながら継続し、今では縁の下の力持ち的な組み込み分野で活躍しているんだ。今年21歳になったMIRACLE LINUXは、どんな風になっていくんだろう?

参考資料

MIRACLE LINUX リリース履歴

リリース日 製品名 コードネーム kernelバージョン ベースOS
2000-09-29 Miracle Linux Standard Edition Version1.0 N/A 2.2.16-3 TurboLinux Server 日本語版 6.1
2001-05-25 Miracle Linux Standard Edition Version1.1 N/A 2.2.19 TurboLinux Server 日本語版 6.1
2001-09-03 Miracle Linux Standard Edition Version2.0 Styrax 2.4.2-2 Red Hat Linux 7.1
2002-07-29 MIRACLE LINUX Standard Edition V2.1 Styrax 2.4.9-31.22ml RHEL 2.1 Update 2
2004-06-11 MIRACLE LINUX V3.0 - Asianux Inside Koumei 2.4.21-9.30AX RHEL 3
2005-03-17 MIRACLE LINUX V3.0 - Asianux InsideSP1 Koumei 2.4.21-20.19AX RHEL 3 Update 3
2006-02-24 MIRACLE LINUX V3.0 - Asianux Inside SP2 Koumei 2.4.21-37.18AX RHEL 3 Update 6
2006-12-12 MIRACLE LINUX V3.0 - Asianux Inside SP3 Koumei 2.4.21-47.22AX RHEL 3 Update 8
2005-11-07 MIRACLE LINUX V4.0 - Asianux Inside Trinity 2.6.9-11.19AX RHEL4 Update 1
2006-07-12 MIRACLE LINUX V4.0 - Asianux Inside SP1 Trinity 2.6.9-34.21AX RHEL4 Update 3
2007-03-02 MIRACLE LINUX V4.0 - Asianux Inside SP2 Trinity 2.6.9-42.7AX RHEL4 Update 4
2009-01-30 MIRACLE LINUX V4.0 - Asianux Inside SP3 Trinity 2.6.9-78.8AXS2 RHEL4 Update 7
2010-01-20 MIRACLE LINUX V4.0 - Asianux Inside SP4 Trinity 2.6.9-89.5AXS2 RHEL4 Update 8
2007-09-18 Asianux Server 3 == MIRACLE LINUX V5 Quartet 2.6.18-8.10AX RHEL5.0
2008-10-07 Asianux Server 3 == MIRACLE LINUX V5 SP1 Quartet 2.6.18-53.11AX RHEL5.1
2009-09-07 Asianux Server 3 == MIRACLE LINUX V5 SP2 Quartet 2.6.18-128.7AXS3 RHEL5.3
2010-07-06 Asianux Server 3 == MIRACLE LINUX V5 SP3 Quartet 2.6.18-194.1.AXS3 RHEL5.5
2011-09-02 Asianux Server 3 == MIRACLE LINUX V5 SP4 Quartet 2.6.18-238.2.AXS3 RHEL5.6
2012-01-17 Asianux Server 4 == MIRACLE LINUX V6 SP1 Hiranya 2.6.32-131.12.1.el6 RHEL6.1
2012-12-13 Asianux Server 4 == MIRACLE LINUX V6 SP2 Hiranya 2.6.32-279.2.1.el6 RHEL6.3
2014-01-30 Asianux Server 4 == MIRACLE LINUX V6 SP3 Hiranya 2.6.32-358.14.1.el6 RHEL6.4
2014-10-02 Asianux Server 4 == MIRACLE LINUX V6 SP4 Hiranya 2.6.32-431.20.3.el6 RHEL6.5
2015-09-16 Asianux Server 4 == MIRACLE LINUX V6 SP5 Hiranya 2.6.32-696.1.1.el6 RHEL6.7
2016-07-21 Asianux Server 4 == MIRACLE LINUX V6 SP6 Hiranya 2.6.32-642.el6 RHEL6.8
2017-05-26 Asianux Server 4 == MIRACLE LINUX V6 SP7 Hiranya 2.6.32-696.1.1.el6 RHEL6.9
2015-10-27 Asianux Server 7 == MIRACLE LINUX V7 Lotus 3.10.0-229.4.2.el7 RHEL7.1
2016-02-18 Asianux Server 7 == MIRACLE LINUX V7 SP1 Lotus 3.10.0-327.3.1.el7 RHEL7.2
2017-10-24 Asianux Server 7 == MIRACLE LINUX V7 SP2 Lotus 3.10.0-693.2.2.el7 RHEL7.4
2019-03-07 Asianux Server 7 == MIRACLE LINUX V7 SP3 Lotus 3.10.0-957.1.3.el7 RHEL7.6
2020-08-04 Asianux Server 7 == MIRACLE LINUX V7 SP4 Lotus 3.10.0-1127.8.2.el7 RHEL7.8
2021-04-26 Asianux Server 7 == MIRACLE LINUX V7 SP5 Lotus 3.10.0-1160.15.2.el7 RHEL7.9
2020-03-19 MIRACLE LINUX 8 Asianux Inside Peony 4.18.0-147.5.1.el8 RHEL8.1

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